「平成最後の」
ワンポイント通信の担当のFさんから、この原稿の依頼を受けた時「これが平成最後の『拝啓経営者殿』になるだろうな」と思いました。この感触は、昭和の終わりには感じられなかった感触です。
昭和の終わりとなった昭和64年1月初め、私は東京都内の区役所の職員でした。NHKでは毎日、天皇陛下の健康状態に関するニュースが流され、自動車のCMに出ていた歌手の「お元気ですか?」という台詞が無音にされ、年末年始の賑やかな街が自粛ムードで静かになっていました。自然と「昭和の終りが近い」などと口にしてはいけないような気持になり「多くの人が考えているのに、口にしてはいけないことが真ん中にある」という重たい空気が漂っていました。職務上考える必要があった元号入りの日付スタンプの変更についても、容易には言い出せない状態でした。御崩御が土曜日だったので、その午後に新元号のスタンプを発注し、日曜日を使って一斉に元号の変更が行われました。
ひとつの時代の曲がり角を、以前より少し軽い気持ちで迎えられることを、有難く思っています。今後は、訴状などの書面の日付は、元号表示にすることをやめて、西暦表示に変えようかと思うこの頃です。
プロフィール
星野 徹HOSHINO Toru
- 弁護士