「”道徳なき商業”の代償」
2019年3月13日立川簡裁は、神戸製鋼所に対して求刑通り罰金1億円の判決を言い渡した。
この事件は、2016年6月に神戸製鋼ステンレスに於いてグループ会社による検査データの改ざんが、発覚したことから
始まる。2017年4月に品質監査が開始され、不正の方法は主に以下の2つであると発表された。
①製品出荷前の検査数値を基準内に収めようと書き換えを行った。・・・・「改ざん」
②検査をせずに架空の数値を記入した。・・・・「ねつ造」
この問題は、グループを含めて国内12、海外5ヶ所の計17工場で不正が発覚し、一部の工場では管理職の指示もあった
とみられ、組織ぐるみの不正として広がりを見せた。そして、この様な不正行為の一部は執行役員3名も認識していたと
のことだった。
また、神戸製鋼所は当初「民間企業同士の契約なので、データを改ざんしていても法令違反ではない」と説明していた。
しかし、改ざんは日本工業規格(JIS)の運用上に問題があるとして、経済産業省はグループ20拠点の再審査をJIS
の認証機関に求めていた。
神戸製鋼所は立川簡裁の判決を受け、「判決を厳粛に受け止め、再発防止策の実行に引き続きグループを挙げて取り組ん
で参ります。顧客や取引先、株主をはじめとした皆さまからの信頼回復に向け、組織体制、企業風土などの抜本的改革を
進めて参ります。」とコメントを出した。罰金1億円が、これらの不正に対する代償として妥当か否かの議論は別として、
そもそ”データの改ざん”や”データの捏造”が事業を営む企業の在り方として許されるものかどうか、私たち企業経営者は
反面教師として学ばなければならないと感じた事例であった。
ガンジーの慰霊碑には、「7つの社会的大罪」の一つとして”道徳なき商業”が刻まれていると言う。
道徳観を持たない事業活動は社会的に大罪であると言っています。大罪を犯した代償が1億円で良いのだろうか?
プロフィール
笠原 廣KASAHARA Hiroshi
- 株式会社エム・エスオフィス 代表取締役
- JRCA登録 品質マネジメントシステムエキスパート審査員、主任審査員
- CEAR登録 環境マネジメントシステム主任審査員