監査役の権限とコンプライアンス
2年前の平成27年5月から、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定め」が登記事項となっています。
ただ、すべての会社が監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款規定を設けられるわけではありません。株式譲渡制限のない会社、監査役会や会計監査人のある会社はこの定款規定を設けられません。
対象になるのは、主に資本金が1億円以下で、株式譲渡制限のある会社です。また、この登記はすぐにしなければならないわけではなく、取締役や監査役などの役員の変更登記の際に、一緒にすればよいとされています。
しかし、上記の定款規定があるということは、監査役には会計監査の権限しかなく、業務監査の権限がないことを公示することになり、コーポレートガバナンスやコンプライアンスに関心がない会社、というイメージを取引先に与えてしまう可能性がある、という意見があります。
そのため、たとえ少額資本金で株式譲渡制限のある会社であっても、取引先に大企業・上場会社がある会社の場合には、むしろ「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定め」を廃止することも選択肢として考えるべきではないか、一度検討してみる価値はあるかと思います。
プロフィール
小池 勝則KOIKE Katsunori
- 司法書士