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雇用調整助成金の存在意義

雇用調整助成金の存在意義

社会保険労務士 髙野 裕久

新型コロナウイルスの発生により世界が混沌とした状態が続いている。

そんな中、我々のところには毎日のように雇用調整助成金の問い合わせが来ております。

先日第二次補正予算において特例期間の9月30日まで延長、日額上限15,000円、解雇無しの場合給付率100%と改正がありました。これについてはかなり恩恵を受ける企業が多いのではないでしょうか。

ただ勘違いをしないで欲しいのは、日額上限15,000円という数字だけがひとり歩きして一人当たり15,000円もらえると思っている方も多いです。

これに関しては、あくまで日額の上限が引き上げられたという事なので、もともと日額が8,330円以下の企業にとっては特に影響はありません。逆に今まで日額が8,330円超であった企業については4月1日に遡って自動的に適用されるそうなので、過去分について特に手続きは必要ないようです。

給与額が高い企業にとっては今まで8,330円超の部分に関して会社の持ち出しとなっていたので、休業手当支給率を下げていた会社もあるかもしれません。今回の改正を機に従業員の生活保障という観点でも給付率を上げるという判断も有りかと思います。

ですが、この助成金はまず従業員へ休業手当を支払っていることが給付の条件ですから、助成金が支給される前に持ち出しが出ることになります。助成金を運転資金のように考えていると資金繰りが間に合わないなんてことも起きてきますので、注意が必要です。
資金繰りが難しい企業にとっては助成金とセットで融資も検討していただければと思います。
ちょっと前に東京のタクシー会社が助成金に頼らず従業員を全員解雇してコロナが落ち着いたらまた再雇用します、という手法を取っているところがありました。ですが、コロナが落ち着いたからと言って従業員が戻って来る保証なんてどこにもありません。

ただでさえ人材不足と言われているこの時代ですから、従業員というのは貴重な存在です。確かに苦しい状況ではありますが、出来れば解雇などはせずに雇用調整助成金を使っていただき、従業員の確保と従業員の生活を保障しながら、この状況を乗り切る方向で考えていただきたいものです。

それが雇用調整助成金そもそもの存在意義だと私は思っております。

動画解説はこちら

プロフィール

髙野 裕久

髙野 裕久TAKANO Hirohisa

  • 社会保険労務士